非公式編集後記 Vol.9:2021年1月6日(水)〜31日(日)
非公式編集後記、2021年の(ようやく)2回目。ほぼ1カ月の振り返りです。6日から31日で編集した記事の中から、気になったテーマを3つ紹介します。
1.「ビットコインはバブルか?」
「バブル」をタイトルに入れた記事は2つ。
1本目は「バブルではない」という記事、2本目は「歓迎する」とした記事。どちらも「バブル」が持つネガティブなイメージの逆を行く記事です。
2本目の記事は簡単に言うと、「バブルで多くの人の注目を集めることは、ビットコインの一般への普及を促進し、結果的にはプラスになる」という主張でした。
確かに今、ビットコインへの関心は再び、高まっています。私の周囲でも、思いがけないところから「ビットコインを買った」という話が聞こえてきます。
バブルがビットコインのユーザーとユースケースを拡大するという主張は、確かに一理あります。仮にバブルが弾ければ、拡大は後退する可能性もありますが、一歩下がって二歩前進というわけです。
1本目の「バブルではない」は、そのタイトルどおり、刺激的な内容でした。これも簡単にまとめると、
という3段論法です。ちゃぶ台をひっくり返すような議論ですが、ビットコインの価値はなにかを改めて考えさせられます。
ビットコイン価格は「前回のバブル」と言われる2017年の約2万ドルを大きく超え、一時は倍の4万ドルを超えました(今は2月6日の3時ですが、3万8000円前後です)。
筆者は、文中で「ビットコインの値動きは、潜在的価値に追いつきつつあると言えるかもしれない」と言っています。
バブルではなく、ビットコインの価値が大きくなっているだけ、というわけです。
「本質的価値が定まっていない以上、バブルとは言えない」
これは、屁理屈にも思えますが、論理的です。だからと言って、価格が下落しないというわけではありません。多くの人が考える「本質的価値」が下がれば、それに伴って価格も下がることになります。
ビットコインの価値が決まるのはいつでしょうか。
大きな可能性としては、「デジタル通貨」がもっと一般的になった時。日本では「デジタル円」、いわゆる中央銀行デジタル通貨(CBDC)を日銀が発行した時でしょう。
ですが日銀はCBDCを研究しているものの、発行はまだまだ先になりそうです。2、3年先ではなく、早くて4、5年はかかると思います。
世界中で見た時に、金融サービスが行き届いている(ほとんどの人が銀行を利用している)日本では、少なくとも国内にはCBDCの切迫したニーズは見られません。
日常的には「●●ペイ」が普及し、デジタル円ではないものの「円をデジタル的に使う」ことはかなり広がっています。「デジタル円」の出番はさほど見当たりません。
と考えると、ビットコインの価値が定まるまでには時間がかかりそうですが、これは日本の話。世界に目を向けると、話は大きく変わってきそうです。
2. ビットコイン価格と投資家の動き
1月、ビットコインは8日に4万ドルを突破した後、12日、22日、27日と3回、3万ドル前後まで下落しました。
この下落局面で投資家は、どんな行動を取ったのか?
結論を言えば、大口投資家は買い、個人投資家は売っています。
根拠となっているデータは、ビットコイン保有数ごとのアドレス数の推移です。
12日の下落を受け、13日に公開したこの記事は、1000ビットコイン(6日11時現在、1ビットコイン4万円=約40億円)以上を保有する大口投資家、いわゆる「クジラ」のアドレス数は増加。
一方、保有額が0.01ビットコイン(約40万円)以下のアドレス数はわずかに減少したとしています。
同じく、22日の下落を受け、25日に公開した記事も、クジラは下落時に買い進めていることを伝えています。いわゆる「押し目買い」です。
※押し目買い:株価が上昇している局面で、一時的に株価が下落したタイミングを見計らって買いを入れる手法です。株価が下落することを相場用語で「押す」と表現することからこう呼ばれます。(SMBC日興証券「初めてでもわかりやすい用語集」より)
投資では、個人投資家の強みは、機関投資家に比べて「長期」投資が可能なことと言われます。機関投資家は株主や出資者に対して、四半期や1年ごとに成果を報告することが求められるためです。
一方、個人投資家の出資者は自分自身。短期的な成果に囚われず、長期的な視点に立てることがその強みと言われますが、ビットコインに関してはそうとも言えない側面もあるようです。
3. 「ボトム・オブ・ピラミッド」とブロックチェーン
1月のラスト、31日(日)に公開したのは、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)関連の記事ではなく、ブロックチェーン技術についての記事でした。
「ブロックチェーンは世界を変える」と言われます。大きなパワーを持っていることは間違いありませんが、そのパワーは世界の「貧困層」にも届くのか? という記事です。
「ボトム・オブ・ザ・ピラミッド(Bottom of the Pyramid:BOP)」、あるいは記事では「ベイス・オブ・ザ・ピラミッド(Base of the Pyramid:BOP)」と呼ばれる世界の貧困層は、実は人口では最も多くを占めています。
国際金融公社(IFC)は1人あたりの年間所得が3,000ドル(約31万6000円)以下となる層をBOPと定義しています。その人口は世界の約70%に相当し、40億人を超えています。
そのBOPに対し、ブロックチェーンを使ったソリューションは届くのか、という疑問です。
多くの場合、例えば、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を目指すソリューションでは、ユーザーがスマートフォンを使っていることを前提としています。
※金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン):すべての人々が金融サービスを利用できるようにすること。具体的には、銀行口座を持たない、あるいは十分な銀行サービスを受けられていない人々にインターネットなどを活用して金融サービスを提供すること。
ですが、そもそもBOPはスマートフォンを保有しているのでしょうか。
記事では15ドル(約1600円)のスマートフォンが急速に普及しており、端末のコストは近い将来、大きな障害にはならなくなる、としています。
例えば、2016年の記事ですが、420円のスマホが紹介されています。
日本にいると、こうした観点はなかなか気づきにくいですね。
記事としては、ビットコインの価格動向を扱った記事がよく読まれるのですが、こうしたブロックチェーン技術をめぐる記事もしっかり追っていきたいと考えています。
おまけ.「BMW i8」にBTCマイニングマシン
もうひとつ、シンプルに面白かったのは、これです。
BMWのプラグインハイブリッドクーペ「i8」は、車両本体価格21,350,000円。BOPとは真逆の記事でした。
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