非公式編集後記 Vol.8:2021年1月1日(金)〜5日(火)
非公式編集後記、2021年の1回目です。
coindesk JAPANは昨日5日(火)が2021年の仕事始めでした。なので、年末年始の29日(火)〜1月4日(月)と、5日朝の1本は昨年末に公開予約を行いました。
休み期間中にどんな記事を公開するか。
そもそも翻訳記事は米CoinDeskがどんな記事を公開するかに依るので、年末ギリギリまで、公開日を変えたり、記事を入れ替えたりしました。
年末年始のラインナップ──ビットコインだらけにならないように
この年末年始は、ビットコイン価格が300万円から350万円まで急騰したこともあり、ビットコイン関連の記事が良く読まれました。
年末は、以下の3本。ビットコインの記事を続けました。
29日の記事は、原文には時々、ジョーク的な言い回しが織り込まれていたのですが、日本の読者向きではない部分は表現を変えたり、ときには削除しました。
米CoinDeskの記事は基本的には堅い記事ですが、ジョークが織り込まれた記事や、Twitterの口語調の文章は、翻訳に苦戦します。
年始も、ビットコインの記事を中心に公開しましたが、年末から続いていたので、1日と5日は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の記事を持ってきました。
- 1日:中銀デジタル通貨は"革命"ではなく"進化"だ:国際決済銀行イノベーション・ハブ責任者
- 2日:サトシ・ナカモトのメールが投げかける新たな謎
- 3日:歴史の転換期に賭ける大物投資家にとってのビットコイン
- 4日:増加する"ビットコイン・クラス"──資産防衛に世代ギャップは縮まる
- 5日:デジタルドルはインフレを加速させるか?──専門家はこう考える
中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、「ビットコイン価格、上昇!」などに比べると地味な話題なので、多くの人に読んでもらうのはなかなか難しい。ですが、無視できないテーマです。
ファンダメンタルズがない=純粋な投資?
年末年始、特に年始の5本の中では、2日のサトシ・ナカモトのメールの記事が良く読まれました。ビットコインの生みの親とされるサトシ・ナカモトは、ビットコインのみならず、暗号資産最大の謎です。
ビットコインの誕生から10年、多くの人が解明を試みていますが、依然として決定的な証拠はありません。このまま、謎として残り続けるのでしょうか?
3日の記事「歴史の転換期に賭ける大物投資家にとってのビットコイン」の原題は、「Druckenmiller, Jones and Bitcoin’s Perfect Trading Machine」、直訳すると、「ドラッケンミラー、ジョーンズ、そしてビットコインの完璧な投資マシン」。
ドラッケンミラーとジョーンズは、著名な(あるいは、「悪名高い」)投資家の名前です。
「ビットコインの完璧な投資マシン」とは一体、どういうことでしょうか?
詳細は、記事を読んでいただけると幸いですが、要約すると
- 有名な経済学者のケインズは、投資を「美人投票」にたとえた。
- この美人投票では、自分が美人だと思う人ではなく、他の多くの人が美人だと思う人を選ぶことが重要。
- 投資も、投資家の多くが「値上がりする」と思う銘柄を選ぶことが重要。
というわけです。
つまり、美人投票は、投票者の「心理」のみが投票の行方を左右しますが、株は投票者=投資家の心理以外に「ファンダメンタルズ」が株価に影響を及ぼします。
ファンダメンタルズは、野村證券の証券用語解説集によると、
経済活動の状況を示す基礎的な要因のことで、経済の基礎的条件と訳されている。
例えば、一国経済の基礎的条件は経済指標で示すことができる。経済成長率、物価上昇率、失業率、財政収支の赤字(黒字)率、経常収支の赤字・黒字額などがそれである。
また、株式においては、株式の本質的価値(ファンダメンタル・バリュー)を決定するのは、企業の財務状況や業績状況であり、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(株主資本利益率)などが代表的な指標として使われる。
です。
株は、そもそも企業の業績に基づくものであり、株価は投資家の「心理」以前に、ファンダメンタルズの影響を受けます。
一方、ビットコインにはファンダメンタルズは存在しない、と筆者は断言します。
「ケインズの美人投票のように、ビットコインの価格は純粋に市場の想像力によるものだ」
文中に、さらっと書いていますが、ビットコインはしばしば、「何の実態もない」「裏づけがない」などと批判されてきました。
ビットコイン・マイニングに今では、膨大なコンピューターリソースや電力代、マイニングマシンの設置コストなどが注ぎ込まれているので、「何の裏づけもない」とは厳密には言えないかもしれませんが、企業活動にベースに発行される「株」と比べると、その基盤、あるいは裏づけは希薄です。
ですが、それ故にビットコインは「純粋な美人投票である」と筆者は述べています。原題の「完璧な投資マシン」は、ここから来ています。
サトシ・ナカモトのアイデアをベースに、デジタルワールドに登場した「完璧な投資マシン」であり、その認識が広がったからこそ、卓越した手腕を持つ、ときに悪名高い投資家がビットコインに参入してきている、というわけです。
筆者は、記事では明確に述べてはいませんが、著名投資家の参入は、ビットコインが投資に値する資産クラスとして認められたと捉える一方で、こうした投資家は、ブラックマンデーなど多くの人が痛手を被った事態から、莫大な利益を上げている事実に触れています。
今、ビットコインは400万円、さらには500万円も視野に入れようとしています。こうした状況のなか、彼らは単純にビットコインの上昇から利益をあげようとしているのでしょうか。
中国のビットコイン投資家の心情
4日の「増加する"ビットコイン・クラス"──資産防衛に世代ギャップは縮まる」も興味深いものでした。
原題は「The Rise of the Bitcoin Class」とシンプルですが、中国のビットコイン投資家が、父親にビットコイン投資を勧めた顛末を描いています。
その過程で、アント・グループIPOの突然の中止にも触れており、(全員ではないにせよ)中国の若い世代が、国に対して抱いている複雑な思いを知ることができます。
作業記録
1月1日(金)翻訳・編集ワード数:878
1月2日(土)翻訳・編集ワード数:1825
1月3日(日)翻訳・編集ワード数:1242
1月4日(月)翻訳・編集ワード数:654
1月5日(火)翻訳・編集ワード数:1320